フェスでソーシャルメディアを活用する場合は「フェスに参加していない人々に向けての仕組みと仕掛け」が必要であり、「フェスに参加している人々に向けての仕組みと仕掛け」が必要だ。
今回はそのフェス空間にまさしく参加している人々がソーシャルメディアをどう使えばより音楽の価値を高め、フェス空間をかけがえのない特別なものにできるのかを考えてみたい。
もっとも、ソーシャルメディアを活用しなくたってフェスという空間は特別なものだ。ソーシャルメディアなんてないときから、多くの人が参加し、歌い、踊り、1年間待ち続けていた。
ただ、ソーシャルメディアによってもっと新しいフェスの形が生まれてもいいのではないかと思う。フェスという場所で活用するソーシャルメディアはフェスと参加者であり、アーティストと参加者であり、参加者と参加者である。人を介してすべてつながる。
インタレストグラフとソーシャルグラフの統合
まずツールありきではなくて、これがいちばん強力で価値あるものだと思っている。twitterやfacebook、mixiのコミュで趣味趣向が一緒な人とフェスという場で出会う。乾杯をする。語り合う。情報を交換しあう。
このインタレストグラフからソーシャルグラフの統合が重要だ。インタレストグラフは趣味趣向でつながる輪。ソーシャルグラフはリアルな輪。音楽、フェスというキーワードを通して、インタレストグラフとソーシャルグラフが混ざり合う。そのつながりは果てしなく強いものになると思う。
私自身もフェスやライブでインタレストグラフだった方とお会いして、ソーシャルグラフとの統合をした方達が何人もいる。その後、彼らの発信する情報はインタレストグラフ時代よりも圧倒的に重要度、信頼度が増す。
しかし、オフ会でも同じことはできる。ただ、フェスという特殊な空間を一緒に過ごす、一緒に聴く。一緒に踊る。一緒に飲む。一緒に語る。これは代えがたいフェスという場だからこそできるつながりの輪だ。その結びつきはきっとオフ会よりも、強固なものになるだろう。
また、フェス空間で出会った形からソーシャルグラフが形成されることも珍しくない。
リアルとソーシャルメディアをかけ合わせる
最近、リアルとソーシャルメディアをかけ合わせる事例も出てきた。
@nike1125くんのブログDon’t be lameから参考にさせて頂く。素晴らしすぎるブログなので、要チェックです。
・『Coca Cola Villege』
有名な事例。Coca Colaが行った10代の若者向けに行ったサマーキャンプで「Coca Cola Village」はFacebookと連動し、参加者それぞれにFacebookデータの入力されたリストバンドを通じて直接「いいね!」をFacebookに投稿できる仕組みを作成し、大成功した。
アパレルのDiselもリアルとソーシャルメディアをかけ合わせたイベントを行なっている。QRコードをスキャンすることでFacebook上で「いいね!」できるというものだ。
FATBOY SLIMの「EYEPHONE PROJECT」
私が知っている限りフェスという場所とソーシャルメディアをかけ合わせた例はあまり知らない。みなさま、ご存知でしたら教えてください。
ソーシャルメディアではないけど、面白いなと思ったのは今年行われたBIG BEACH FESTIVALでのFATBOY SLIMの試みだ。
「EYEPHONE PROJECT」とはFATBOY SLIMのある特定の曲が流れたら参加者はiPhone、iPod touch、ガラケー(Androidがないのが残念)で事前ダウンロードしておいた「EYEアニメーション」を起動させ全員がスクリーンに向かって掲げる。
すると、会場には無数の『目』が浮かび上がるという仕組みだ。これは参加者とフェス、アーティストとフェス、参加者と参加者がつながるアイデアでとても面白いと思うのだが、これを拡散させるその場にいない人にも届けることができたらよかったのになあと思う。
フェスでできるリアルとソーシャルメディア
さて、では実際に何かできないだろうか。その際に以前書いたブログにも
フェスには音楽だけでなく、食べ物や衣服、現地の情報など
多岐に渡る情報交流が生まれ、多様なコンテンツが生まれている。
フェスは音楽だけではないということだ。
SNS
Coca Cola Villegeでもあったようにフェスではリストバンドを工夫してあらゆるところにリアルいいね!などがあったら、非常に興味深い。
それが参加者を超えてソーシャル上でも広がる。そのいいね!がステージ、お店、アーティスト別に出来たらワクワクする。また、写真にタグ付けできるのもフェスの魅力を伝える上では非常に強力だろう。
位置情報サービス
それになりの規模を持つフェスならステージごとにチェックインさせてすべてのステージにチェックインしたら、インフォメーションセンターでフェスコンピCDが貰えるとかアーティストインタビューの優先権がもらえるなどといったインセンティブを与えて宝探しのように参加してもらうのはどうだろう?
個人的にはfacebookplacesのあのマークを大学で行ったように是非ステージエリアごとにあったらワクワクしてしまう。
そして、ついにリリースされた人・場所・興味の3軸でコミュニケーションを活性化させ『いま、ここにいる価値を最大化する』iPhoneアプリWondershakeも大いにフェスとの相性はいいはずだ。その他のローカルコミュニケーションツールも価値を発揮すると思う。
クーポン系
facebookチェックインクーポンをはじめ参加者だってどんなに多くても10万人程度なので規模としては限定的であるがクーポンも悪くない。特にフェスはフェス飯と言われるくらいご飯も重要なキーワードのひとつだ。常連店であれば1年間待ち望んだ味だし、新しいお店はそこの間に入っていかなくてはならない。そんな中でクーポンを活用するというのもメリットではないだろうか。
写真共有サービス
Color(最近微妙ですが)、InstagramやCamera360も可能性としては面白い。動画版Viddyも面白いかもしれない。また、Instagramの場合はInstagram現像機というものがあり、Instagramの画像をその場で現像できる。こういうのがあったら、多くのアクションを期待できる。
マイクロブログ
去年はハッシュタグが大いに盛り上がったが、今年はそれに加えて写真共有サービスが広く使われるような気がする。
パトロン、マッチング
例えばフジロックやサマソニには新人アーティストがオーディションに合格して出演できるステージがある。フジロックのROOKIE A GO GOは昔のくるりやサンボマスターが出ていた。
しかし、そこに仮に出演できたとしてもなかなか今の状況では難しいものがある。
そこでGrow!やgetstage、Campfireなどのソーシャルパトロンサービスを活用し、一緒にフェス空間をきっかけにして、今後創り上げていく方法論もあるのではないかと思ったりしている。
フェスというのは楽しみ方がひとつではない。ライブをただひたすら聴くのいいし、昼寝して美味しいものを食べて気が向いたらライブを見に行ってと何十通りも楽しみ方がある。はっきり言えば自由だ。
そういった中でリアルとソーシャルメディアを活用し、楽しみ方の幅を持たせるのもひとつの方向性としていかがだろうか。動画共有サービスはどちらかというとフェス後だろうし、ARを用いることもありだが、個人的には微妙なところである。
と、つらつら書いてきたが、大きな問題がある。
多くのフェス参加者(世の中の多くの人)は『そんなサービスなんて知らない』ということだ。twitterはまだしもfoursquareやcolor、Instagramなんてほとんど知らないだろう。
だから、使われない。広がらない。価値を産まない。フェスという場をソーシャルメディアのトライの場として機能させる。ライブとライブのあいだのビジョンなんてずっと同じ映像だ。
ああいう場所にソーシャルメディアサービスを紹介したら、試してくれるユーザは多いのではないかなと思う。
もしくはブースなどを設置し(実質スポンサーになるという意味だが)サービスの認知を広める。知ってもらって使ってもらわないと始まらないのだ。そこは結局、音楽と一緒で聴いてもらって始めて次がある。
フェスサイトのみならずフェス自体にもソーシャルを組み込んでいかなくてはならない。
つまり、フェスという場はリアルなつながりをより強くし、オープンに生まれた関係をよりリアルにもっていきやすくするためにソーシャルメディアを活用する。
そういった中で今回はフェスという場におけるソーシャルメディアの可能性を考えてみた。
これ以外にもアーティスト自身がFATBOY SLIMのようにソーシャルライブを行うこともこれからは十二分に考えられるだろう。
今回は@nike1125くんのブログの情報をもとに考えてみました。感謝です。ありがとう。さて、みなさんは今年どこの夏フェスに行かれますか?