日本メジャーレコード会社のfacebookページの使い方

世界では8億人を突破し、日本で訪問者数1000万人を超え、アクティブユーザも500万人に達したと言われる世界最大のソーシャルネットワークfacebook。

音楽業界に限らず多くの企業がマーケティングのために参入し、facebookページを設けている。今回は日本のメジャーレコード会社のfacebookページを取り上げて考えてみたい。

メジャーレコード会社のfacebookページを考える

Sony Music Japan International、Warner Music Japan、EMI Music Japan、Victor Entertainment,Incの5つをピックアップする。選定理由に深い意図はない。

Sony Music Japan International
9月26日ファン数:7072人

sony.png

情報発信を中心にジャンルごとのtwitterタブが見受けられる。
情報発信内容もtwitterと連携しているようだ。

SONY MUSIC SHOPはECではなく、最新リリース情報ページのように思える。しかも、更新されてないのではないかという気がする。
また、最新動画では所属アーティストのミュージックビデオが見れる。
一押しアーティストでは現在ではジェニファー・ハドソンのランディングページ的な位置づけとなっている。これも更新されているのかなあ。。。

直近の投稿を見るかぎりコミュニケーション方法は主にtwitterからの情報発信のみでファン数に比べ、インタラクションが少なくユーザもとコミュニケーションはしていない。コメントも返していない。
< 【EMI MUSIC JAPANEMI MUSIC JAPAN(International)
9月26日ファン数:邦楽2799人、洋楽537人

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洋楽用のfacebookページの情報発信内容はtwitterと連携している。イベントや写真も投稿したりしている。
最新リリース情報タブでは直近の発売アーティストの画像を含めたページ構成になっている。

コミュニケーション方法はSony Music Japan Internationalと同様にtwitterからの情報発信のみでインタラクションが少なくユーザとコミュニケーションはしていない。コメントも返していない。

一方、邦楽用のfacebookページは情報発信はtwitterと似ているものの、きちんとfacebook用に変え、投稿している。
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各種タブも最新リリース情報のほかにキャンペーンタブやガイドラインも作られている。直近の投稿を見るかぎりコミュニケーションはfacebook用に直した情報をもとにインタラクション数もそれなりに多く、ユーザからのコメントにも対応している場合がある。ただし、コメント者全員に対するコメントが多い。

Warner Music Japan Inc.
9月26日ファン数:991人
warner.png

情報発信はfacebook独自で行われている模様。
twitterからの連携は特に見受けられない。直近のコミュニケーションではなんとなく中の人の人柄が垣間見れる。

他のレコード会社のようにニュースリリースタブを用意している。
プレゼント系ではレッチリの直筆サインフォトのキャンペーンなどを行なっている。

母数がまだ少ないのでインタラクション自体が少ないが時折、コメントもすべてではないが、対応している。
その際、コメント者全員に対するコメントが多い。

Victor Entertainment,Inc. (ビクター/JVC)
9月26日ファン数:1135人

victor.png
情報発信はtwitterと似ているもののきちんとfacebook用に変え、投稿している。
直近の投稿を見るかぎり、最新情報に紐づいてイベントを作成などを行なっている。

ユーザのコメント自体が微量なので、コミュニケーションという部分では
いいね!数などのインタラクション数はまだ少ない。

facebookページの目的は何か?

上記のレコード会社のfacebookページを見るかぎり、どこもそれほど
差異はなく、似たり寄ったりの使い方をしてるようだ。

基本的には情報発信が中心。内容はtwitterと同じもしくは、少し変えている。
そもそもfacebookページを立ちあげた目的はなんだろう?
facebookページを開始、運用をする上でゴールはなんなのだろう?
KPIとKGIはどのように設定しているのだろう?

ソーシャルメディアのあくまで基本的価値であり、素晴らしいところは、ユーザと直接コミュニケーションができるところだ。

それを踏まえてfacebookページでは一方的な情報発信が多い。
それならば音楽情報サイトやtwitterと大きく違わない。
情報発信が悪いわけでもない。twitterとの連携が悪いわけでもない。(個人的にはあまりいいとは思わないけど)

大切なことは、facebookページである必要はなにか?
その理由が必要だ。

これはレコード会社に関わらず、企業がfacebookページを開設しようとする際に必ず考えなければいけない点だ。『手段の目的化』で始めている場合が非常に多い。

もちろん、今回考えてみた各レコード会社のfacebookページがどのような理由で開設にいたり、どのような運用を行なっているかは想像するしかないし、当事者ではないのでわからない。

ただ、外側から見たときに、とても勿体無いなあという印象だ。
音楽という素材はソーシャルメディアとの相性も良く、ニュースもコンテンツも伝搬されやすく、共有、共感されやすいものだ。

その中で、各レコード会社がfacebookページを比較的(コミュニケーションしている場合もあるが)一方通行的な内容に留まってしまっているのが、ユーザとしてちょっぴり残念ではある。

facebookページでの管理者との基本的なコミュニケーション方法はウォールだ。
タブにいろいろなコンテンツや要素を入れすぎてしまうことが稀にあるがタブは正直最初以外はほとんど読まれることは難しい。

やはり管理者とユーザがコミュニケーションを取るにはウォールを効果的に使って、こまめな更新をすることが運用では求められる。

例えば、ユーザ同士でコミュニケーションを発生させる方法として考えたい場合はBESTBUYが使用しているアプリなどは参考になるかもしれない。

besubuy.png

BESTBUYのfacebookページのタブにある「Shop&Share」は
自分の気になっている商品をソーシャルグラフの仲間に意見を求めることができる。
音楽のような商品の場合は相性がいいはずだ。

ask.png
このように、タブを作る場合はウォールとの連携と定期的に訪れたくなる動機を内包したコンテンツが必要だ。

音楽業界以外から見るfacebookページの使い方

音楽のように定期的に早いペースで世の中に発信される(流通という意味ではない)形で
参考になるのが、コニカミノルタプラザのfacebookページだ。
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コニカミノルタといえばプリンタやカメラのイメージが強いかもしれないが、実は新宿のど真ん中の高野フルーツが入るビルにアートギャラリーを持っている。
ここでは約2週間に1回のペースで、3つあるギャラリースペースを使用して定期的に展示内容を変えている。

このコニカミノルタプラザのfacebookページが素晴らしい点として3点ある。

①展示内容以外にも情報発信を行い、コミュニケーションをしている
②中の人が垣間見れる人間味が伴うfacebookページ
③コメントのすべてに返信し、ひとりひとりのユーザを大切にしている

まず、ともすれば「次の展示はこれです」といった紋切り型の投稿になりがちなのを、あらゆる切り口から多面的な情報発信を行なっている点が挙げられる。

これから始まる展示でいえば、タブを頻繁に更新しつつ「現在設置中の様子」や「打ち合わせの様子」フライヤーの先出しなど、ただの一方通行的な情報告知ではなく、ユーザが興味を持ちそうな内容を多面的且つ定期的にウォールに投稿している。

次に、中の人の人間味溢れる投稿が挙げられる。
新宿の天気やお昼に食べたこと、また新宿ではある種伝説な「タイガーマスクのおじさんと仲がいいから写真撮った」など非常にバラエティに富んだ情報を発信している。

ギャラリーの展示内容の多面的な情報発信と展示以外の中の人の人間味あふれるコミュニケーションでfacebookページをうまく利用している。当然ながらtwitterとは違う使い方を行い、きちんとコニカミノルタプラザにおけるfacebookページでの目的とゴールを考えて運用している印象だ。

3つ目にその人間味を重視しながらコニカミノルタプラザの情報を発信しつつウォールに投稿されたすべてのコメントにひとりひとりきちんと丁寧に返信している点だ。

ソーシャルメディアの根本的かつ素晴らしい点であるユーザとのコミュニケーションをしっかりと理解した上で、「自分だったら何をされたら嬉しいか」を念頭に置いているコミュニケーション方法である。

また、すべてのコメントにきちんと返信するという形で最も有名なのが伊藤ハムのfacebookページのハム係長だろう。

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ハム係長というキャラクターで飾り切りなどならではのコンテンツとハム係長のキャラ設定は非常に秀逸で、あっという間にfacebookページで大人気となったページである。

キャラ設定やコメント返信、コメント内容やユーザが投稿したものに対してもこまめに対応するなど、様々な要素が重なりあい、コミュニケーションをとても重視した運用をしているからこその結果だろう。

コニカミノルタプラザ伊藤ハムのハム係長のように
自社の情報や内容を発信しつつ、あくまでfacebookはお客様、ユーザが中心。
その中で楽しんでもらう、笑顔になるようなコミュニケーション方法を実施している点が何より素晴らしいところだろう。

成功事例はなにか?
それは各企業によって異なるし、成功の定義もそれぞれだ。レコード会社でもきっとそれぞれ異なる。

バラバラの点と点を線でつなぐ新しい未来の形

先日、発表されたF8によるOpen Graph拡張により、
今までより一層音楽という素材がfacebook上で流れだすだろう。

そのときにレコード会社のfacebookページは何ができるのか。
目的とゴールをしっかりと定めた上で、日々チューニングをする必要がある。

それはレコード会社発信かもしれないし、レーベル発信かもしれないし、
レコード会社の看板をしょった個性ある人間の発信かもしれない。
自社サイトとの連携やその他のソーシャルメディアとの関連も考慮しなければならない。

例えば、競合であるTOYOTA、NISSAN、HONDAがtwitter上でコミュニケーションを行ったり、業界を共に盛りあげてく、それを可視化できて、ユーザも巻き込んでいくことだってソーシャルメディアでは可能だ。

tnh.png

そもそもレコード会社がfacebookページを持つ意義自体も考え直さなければいけないかもしれない。音楽を聴く、買う際にレコード会社がどこかなんてまず気にしない。ソーシャルメディア時代におけるレコード会社の存在については違う機会に考察する。

さて、これからはひとつの個別のレコード会社ではなく、レコード会社合同でfacebookページを立ち上げるとか、ナタリーやBarksのようなサイトを立ち上げるとかレコード会社でしか出来ないことをレコード会社同士が一緒になって取り組むことも必要なのではないか。

レコード会社ひいてはプロモーター、webサービス会社などもひとつになって共通の音楽プラットフォームを構築する。それは既存のソーシャルメディア上かもしれないし、新しいプラットフォームかもしれない。そういった動きが出てくるべきだと思うのです。日本の音楽産業をどうするか。日本の音楽コンテンツを世界へ持っていくことも必ず必要だと思う。国内と国外。方法論はたくさんある。

光のようなスピードで変わりゆく時代の中で、音楽は人生を豊かにしてくれると信じています。だからこそ、もっともっとトライしてほしいなと心から思います。


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