リアルでの【共鳴】はファン階層の階段を飛び越え【共有】を始める

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『共有』→『共感』→『共鳴』のサイクルを描くにあたって、音楽に対して最も関与度が高くなるのは、『共鳴』に他ならない。その『共鳴』が起こりうる場は基本リアルだ。リアルというのはライブ、コンサートなどいった直接的体験である。

ライブやコンサートでいえば、楽曲だけでなく、アーティスト、照明、映像、音響、観客すべてが総合的に『結晶』として結実されるからこそ、コピーできないただひとつの体験として価値が生まれ、『共鳴』が生まれる。

今回はリアルでの『共鳴』はファンのレイヤーの階層を一段ずつではなく、3段飛ばしで引き上げることのできる唯一の方法だということについて考えてみたい。

今回のポイントは3つだ。

  • 1、コアファン「だけ」をターゲットにするのではなく、コアファン「から」ターゲットを広げる
  • 2、ソーシャルグラフを最大活用させるために『共有』できるコンテンツをソーシャルメディア上に配置する
  • 3、リアル「だけ」がファンの階層を一気に引き上げることができる

ライブに訪れるのはすべてがコアファンではない

先日、初めてPerfumeのライブに行く機会があった。それはそれは素晴らしくて感動するライブだった。ここ最近のライブで最も心震えたと言って良い。Perfumeのライブはもちろんコアファンが圧倒的に多いわけだが、重要なのは「初めてPerfumeを見る人」であり、「ちょっとPerfumeに興味があった人」である。

お金を落としてくれるのは基本はコアファンだ。なので、いかにコアファンに継続的にお金を払ってもらえるかが大切だ。それはCDであり、グッズであり、ライブチケットだ。

しかし、それではあまりにもパイが小さい。今後重要なのは「いかに潜在層を顕在層にするか」であり、「顕在層はいかにしてミドルファン、コアファンへと階層を引き上げることができるか」である。

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その際、ソーシャルメディアも含めたwebだけでは当然限界がある。
ソーシャルメディアでできることは基本『共有』と『共感』だ。そして、そのステップは着実な一歩一歩進む階段である。顕在層がいきなりコアファンになることはあり得ない。

あるアーティストのコアファンがソーシャルメディア上でコンテンツを『共有』して、そのコアファンのソーシャルグラフの誰かがコンテンツに接触して『共感』したとしても、それは潜在層から顕在層へ移行しただけに過ぎない。

例えば、その中のひとつに昨日から話題のPerfumeマッシュアップの件がある。これはクワトログラフのミュージックグラフとリレーショングラフが中心となり違う音楽からPerfumeを知る、逆にPerfumeから別の音楽を知ることで『共有』『共感』の架け橋を作り、ライトファンを作り出すことができる。また、よりPerfumeのエンゲージメントをユーザ主導で生み出すこともできる。そこにソーシャルグラフが交わりいま、ソーシャルメディア上で話題となっている。これも潜在層を顕在化するひとつである。(しかしおそらくこれはPerfume側の意図したものではなく結果的にだと推測する)

さて、顕在化したユーザ並びにライトファンがそこでライブというリアルに足を運ぶためには、そのコアファンとの連動が必要になる。つまり、コアファンがエヴァンジェリスト(伝道者)となり自身のソーシャルグラフでの友人を「巻き込む」ことができるかどうかである。

その興味が顕在化された、もしくは関与度が低い友人は自身ではおそらくライブに行こうとは思わないし、積極的に情報を取得しようともしない。なぜなら、まだそこまで関与度は高くないからだ。

しかし、そこに信頼に足るコアファンのソーシャルグラフの友人が付加されることで、そのハードルは越えることができる。なぜなら、コアファンが「勝手に」そして「熱く」その友人に情報を伝達するからだ。私自身もよくある現象だ。僕がエヴァンジェリストになることもあれば、エヴァンジェリストから誘われることもある。

つまり、100人のコアファンを作る100Tribes(ワンハンドレッドトライブス)をいかに101Tribesできるかがリアルを含めたソーシャルメディアができることで重要なことになる。

すると、音楽発信側からすると、いかにコアファンがエヴァンジェリストとなるようにできるか、そしてエヴァンジェリストが伝達できるように『共有』できるコンテンツをソーシャルメディアを含めたweb上に配置できるかがポイントになる。

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エヴァンジェリストに誘われて訪れた顕在層やライトファンがリアルでの『共鳴』により、自身がコアファンへと進化し、新しいエヴァンジェリストとなり、コアファンの母数を増やしていく。そこにソーシャルメディアを活用することで循環が生まれる。現時点でのコアファンに限定しないことが重要だ。

リアルこそが『共鳴』を生み出す最大装置

ソーシャルグラフ内のコアファンをエヴァンジェリスト化することは今後大事なことだ。
改めて書くが、コアファンを作り出す「だけ」では足りない。コアファンがエヴァンジェリストになり、第二第三のコアファンを作り出せるかが鍵だ

では、どうやったらコアファンになるのか。それは『共鳴』しない限り起こらない。
その『共鳴』を生み出すことができるのがリアルという名のライブでありコンサートだ。

話をPerfumeに戻そう。
Perfumeを初めて見た僕は今まで知り得なかったことばかりだった。
のっち、かしゆか、あーちゃんのキャラやMCの卓越さ、ライブ構成、丁寧に深く深くするお辞儀、素晴らしい照明、ダンス、映像。お客さんひとりひとりを大事する姿勢、そして、なにより本当に楽しそうにパフォーマンスをする3人。

テレビや雑誌で多少のイメージは存在していたが、まさかここまでとは思いも寄らなかった。もちろん、Perfumeだから成立する要素もあるのは事実だが、リアルはwebで音源を聴く、Youtubeでミュージックビデオを見る、だけでは絶対にわからない瞬間の熱量がそこにはある。

コアファンの中にいるライトファンというのは得てして疎外感を感じてしまいやすいものだが、少なくともPerfumeはコアファンをもちろんのこと、僕のようなライブに行ったことがないライトファンまでも意識されたパフォーマンスだった。

『共有』や『共感』と『共鳴』の明確な違いは「身体性」が存在しているか否かだ。
生で体験する、体感することはコピーできない。コピーできないただのその数時間が消えない数時間になる。リアルでの【共鳴】はファンの階層を飛び越える。ライトファンが一気にコアファンへ変異するきっかけを生み出せる。

「Perfumeのライブ最高だったー!」「Perfume大好き!」
ライブが終われば『共鳴』を起こしたファンがソーシャルメディア上に感情を『共有』する。すると重要なのはその熱量をどれだけ持続させられるかである。そして、ライトファンからコアファンへと進化するための「おもてなし」の準備がweb上やその他施策でできるかである。それはつまり、『共鳴』→『共有』→『共感』のサイクルになる。ソーシャルレゾナンスとは『共有』からすべてが始まるわけではない。

そういう意味では『共鳴』後の熱量を持続、継続、拡散させるために、アーティストサイトにあるコンテンツを『共有』化し、入口をたくさん設け、出口もたくさん設け、この場所でも十分に享受できる国際線の空港のようにソーシャルターミナル化することは重要だろう。

音楽は生で体感することがいちばん素晴らしい。
そして、アーティストとの絆や応援のためにCDを買ったり、グッズを買ったり、感情をパッケージ化する。その流れの中にいかに『共有』→『共感』→『共鳴』のサイクルであるソーシャルレゾナンスをどう設計するかが今後大切になってくる。

しかしながら結局、今回言いたかったことはただひとつで僕はPerfumeが大好きだということである。サマソニ出演決定にも嬉しさがこみ上げる火曜日の夜でした。


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