ソーシャルインフルエンスは一過性だけではない中長期的な関係を作り出せる

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これまで2回、ソーシャルインフルエンスについて考えてみた。

今回はソーシャルインフルエンスがこれまでの時代になかった新しい価値を
生みだすことが出来る可能性について考えてみたい。

瞬間的にブレイクして低迷していくアーティストたち

CDパッケージが全盛の時代は音楽の共通言語が多かった。

みんながお茶の間で同じ番組を見て、ラジオを聞いて翌日の学校や職場で共通の話題を話す。そんなことが日常的に行われていた。その中で大ヒットと呼ばれる楽曲が次々と生まれ、そのセールスはシングル300万枚など驚異的な数字で売れていた。そして、何度もヒットを連発するアーティストが生まれた。それはサザンであり、ミスチルであり、B’zであり、小室ファミリーなどであった。(当たり前だが実際はもっといる)

しかし、多くの人が好きになって、楽曲も売れたが続かなかったアーティストも数多い。それは俗に言う一発屋という括りでいつのまにやら聴かれなくなってしまった。音楽活動を行なっていく上でずっと売れ続けるアーティストなんてほとんどいない。それは奇跡に等しいような倍率だろう。

けれど、たった1曲でも2曲でも当時の時代も相まって爆発的に売れ、「みんなが曲を聴いている、好き」であったアーティストは無数に存在したのだ。

90年代~00年代はマスメディアが圧倒的だった。そのマスメディアに載ることができなくなっていくとやはり露出は減少せざるを得ない。いつの時代もそうだが、いかにヒットを生み出し続けるかというのは至難の業だ。

ある1曲が爆発的に売れて、次作も売れたとしてもそれは前作の評価に対する期待値であり、純粋な次作の評価ではない。そして、その次作がイマイチであれば関与度が下がっていき、やがては聴かれなくなってしまう。

このような現象でもったいなかったことは、CDを購入した人のみで括ってしまったことであり、音楽の単位を1曲から引き上げられなかったことだ。そして、生活者と中長期的につながる仕組みがファンクラブ以外存在しなかったことだ。

1曲がヒットしたアーティストのファンクラブに入会するファンは決して多くはないだろう。アルバムないし複数曲に素晴らしいと思わなければ動かないのではないか。少なくとも僕は入会したことがない。入会したのは音楽の単位が1曲ではなく、アーティストになっている場合のみだ。

ソーシャルインフルエンスは中長期的につながる仕組みがある

ソーシャルインフルエンスはソーシャルメディアと戦略PRを組み合わせてムーヴメントを生み出し、「世の中ゴト」を作り出すことだ。それは「短期的な話題化」と「中長期的なブランドコミュニケーション」を複合的に行っていく新しいコミュニケーションコンセプトである。形は違えど、過去にも脈々とムーブメントは生まれ、社会現象を生み出し、人が動いていきた。

しかし、いまこの情報大爆発時代に趣味嗜好は細分化され、お茶の間文脈はほぼ消滅してしまった。そこにコミュニケーションのインフラとしてのソーシャルメディアとマスメディアも含めた売れる空気を作る戦略PRで新しい影響力のチカラを生みだすソーシャルインフルエンスは音楽ビジネスに一筋の可能性を見いだせるかもしれない。

過去のムーブメントとソーシャルインフルエンスを使ったムーブメントの違いは単発で終わらないコミュニケーション設計を行えることだ。以下の図にある「Campaign」の箇所が楽曲でも成立するはずだ。

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今まではマスメディア中心として大きな山を作り出していたが、その山が下がってくると(しかも速いスピートで)その下がった山を盛り返すことはできず、いつのまにか生活者の中から忘れ去られていく。言うならば、悲しい「消費」のされ方で終わってしまう。

その悲しいサイクルをソーシャルインフルエンスは解決することができる。それはソーシャルメディアがあるからだ。

ソーシャルメディアマーケティングはBuzz型な用途ももちろんあるが、facebookページやTwitter、Google+などで生活者とのエンゲージメントを中長期的に作っていくということができる。ムーブメントで接触した人たちとの再接触の場を作り出す。いわゆる、Always-on型と言われるものだ。

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ムーブメントが終息しても100人のコアファンを作り出す

本来であればどんな形でもいいが、楽曲であれアーティストが「世の中ゴト化」し多くの人の耳に、目に触れ、ヒットし続ける仕組みがあればと思う。しかし、残念ながらそれは難しい。仮にマスメディアに載ったとしても(広告でもパブリシティでも)もはやモノが動かなくなってきたのが現在である。

素晴らしい楽曲があるにも関わらずその時のタイミングだったり、縁だったりあらゆる要素が組み合わさって徐々に忘れ去られてしまう楽曲やアーティストは多い。もちろん、まずその1曲をヒットさせることが難しいわけだが、それが持続せず活動が圧縮され、つまりは食えなくなるのは残念でならない。最悪の場合は、音楽を辞めてしまっている可能性すらある。

しかし、ソーシャルメディアをうまく活用すればソーシャルインフルエンスで生まれたムーブメントが終息しても、ファンとエンゲージメントを高め続ける場が存在できる。現状の多くのアーティストfacebookページのように一方通行的な情報発信ではNGだが、コミュニケーションをファンと取りながら、エンゲージメントを高めていくことはできる。

その結果、多くの人は忘れてしまうかもしれないが、生涯応援し続けてくれるファンが生まれる可能性も秘めている。ソーシャルメディアは1000人のライトファンより100人のコアファンを作るべきだと述べてきた。その100人がエヴァンジェリストとなり、新しい潜在層ないし顕在層を巻き込んでくれる。そして、いつかまたソーシャルメディアから再び大きなうねりを起こすことだってありえるだろう。再結成バンドなどにも有効だ。(期間限定は除く)

今回、ムーブメントを起こすということは、必ずムーブメントは終息することであり、その先にソーシャルインフルエンスは今までのムーブメントとは違う仕組みを提供できるのではないかという仮説のもと、考えてみた。

盛り上がったムーブメントに触れただけで終わらせるのではなく、ファンと恒常的にコミュニケーションを取れるように導く。そうなっていくとムーブメント後も規模は縮小するが、大切で大事なコアファンとつながっていけるし、コアファンをライブなども含め醸成することができる。

芽吹いて、花が咲いても散らないように、小さくても咲き続けられるように。

ソーシャルインフルエンスやソーシャルメディアが音楽を奏でる人たちの役に立てるといいなあと願いながら、今日はここでおしまい。


【独り言】
さて、今年のサマソニは「メタリカ」と「ミューズ」!!!!!!!
MUSEのさいたまスーパーアリーナは素晴らしかった(T_T)


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