世界が惚れたニール・ヤングのハイレゾ音楽プレイヤーPono Playerが人を動かしたワケ

ニール・ヤングが設立した「Pono Music」はハイレゾ音源対応音楽プレイヤー「Pono Player」を発表しました。SXSWでもニール・ヤング本人が登場し、話題をさらったのも記憶に新しいです。

その「Pono Player」がこの度、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で出資を募ったところ、目標金額の80万ドル(約8150万円)に対して記事作成時点では約390万ドル(約4億円)という出資が寄せられています。

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いま、「Pono Player」が静かなブームの兆しを見せています。

◆ニュースを生み出す「Pono Player」

「Pono Player」の秀逸なところは、製品スペックの凄さはもちろんのこと、ポイントは「Pono Player」の世の中への登場のさせ方にあります。

SXSWという音楽業界は当然ながら、広告、IT、マーケティング業界など様々な業界が注目している場所での発表とニール・ヤング登壇というニュース性、数多くのミュージシャンの賛辞の声を同時に発信することで、ただの音質ファンを超えたトライブスを築くことに成功しています

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また、ニュースの特性と量の出し方が秀逸です。「SXSWでの発表」「ニール・ヤングの登場」「ミュージシャンが手がけるハイレゾ音源プレイヤー」「数多くのミュージシャンの賛同の声」「出資時の価格とはいえ、ハイレゾにも関わらず魅力的な価格」「Kickstarterでの爆発的な支援金」など音楽ファンを超えてニュースを広げています。そして、それをソーシャルメディアが拡張させます

◆生活者も「音がいいのはわかっている」

ハイレゾ音源は日本においてはまだまだ一般化していません。ただ、アニソンなどを中心に音楽ファンや音質ファンの中で人気を得始めています。

SONYもハイレゾ音源対応のwalkmanを投入するなど、市場は徐々に活性化していっているように思えます。

重要なのはメインターゲットとサブターゲット戦略です。イヤホンやヘッドホン、スピーカーにこだわる層へマーケティングをしていくのは当たり前ですが、ポイントはその先を描くか、描かないかです

音質ファン以外はターゲットに含めないことも立派な戦略です。しかし、回収や利益を鑑みた場合、それだけで良しとできないのも事実です。だとしたならば、音質ファン以外にも波及するようなマーケティングを考える必要があります。

しかし、多くの生活者はハイレゾ音源や高音質に対して、購入モチベーションが湧きづらいのが実情です。もちろん、ハイレゾ音源を聴いたり、良いヘッドホンで聴けば、その凄さを体感できます。違いも当然わかります。けれど、それは購入モチベーションや関与度の向上に辿り着くことは稀です。

つまり、ハイレゾ音源や良いヘッドホンで聴けば、いい音なんてことはわかっているのです問題なのは、そこに買い換える、調べるモチベーション設計をどこに置くかなのです。

◆「ヤバい空気」を作れるか

ニール・ヤングの「Pono Player」がここまで世界で注目され始めているのは、もちろんニール・ヤング本人のアーティストパワーは計り知れません。そこは間違いないと言えます。

しかし、それよりも本当に多くのミュージシャンの賛同の声やこだわり抜いた製品設計、斬新なプロダクトデザインを見事に組み合わせ、世の中に「こいつはなんかヤバそうだ」という空気を生み出していることです。

言い換えれば、「WOW」だったりもするわけですが、大切なことは、メインターゲットは当然ながら、サブターゲットまでを包括した「ヤバい空気」を作れるかです。

また、プロダクトデザインの場合、いかにライフスタイルに組み込まれるかがポイントです。ヘッドホンのBeatsもライフスタイルに音質だけではない形で組み込まれたからこそ、音楽ファンや音質ファンを超えて大きなムーヴメントに成長しました

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まだ「Pono Player」は一部の音楽ファンや音質ファン、ガジェットファンの中で盛り上がっている「仲間ゴト化」の段階です。個人的にはPono Playerが話題になるというより、こういったものの登場から音質への関与度が少しでも上がるといいなと思います。(ニール・ヤングの日本の影響力は一部だし、悲しいけど、多くの生活者は基本音質まではあまり興味ないですから)

もしも、メインターゲット以外にもここから一層拡張していくためには、「Pono Player」に関する否定的意見の発露でしょう。賛否両論が巻き起こることで話題は拡張され、ムーヴメントは生まれます。そして、音質マーケティング以外の訴求を今以上に実施すべきです。(一部でデザインがダサいという声も聞こえていますが僕は好きですw)

音楽配信サービスの「PonoMusic」も開始するとのことなので、包括的な音楽ライフスタイルをニール・ヤングは始めようとしています

僕も出資してみました。楽しみで仕方ありません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。