前回書いたブログ「それはコミュニケーションサービスか?音楽サービスか?」
そこで記載した音楽サービスは「仲間ゴト」化までしか到達しないが、コミュニケーションサービスは「世の中ゴト」化まで到達する可能性を秘めていると書いた。
今回はその中でソーシャルメディアと連結のさせ方について考えてみたい。
以下から記載する音楽サービスとはサブスクリプションサービスも含んだものと規定する。ただし、サブスクリプションサービスのみは他の音楽サービスとは目指すべきものが違うと最初に伝えたい。理由は前回のブログを読んで頂ければと思う。
ソーシャルメディアとの連結のほとんどが機能的側面
多くの音楽サービスがソーシャルメディアの連携において機能的側面でしか連携していないことがほとんどだ。その機能的側面とは主に3つしかない。
1,ソーシャルログイン
2,ソーシャルメディアへのフィード
3,サービス内でソーシャルログインした自分のソーシャルグラフの可視化、連携
これはソーシャルメディアと連結させたひとつのパターンではあるが、これだけではソーシャルメディアと連結させる上で勿体無い。
確かにソーシャルログインにすることでユーザは簡単にサービスを開始できるし、サービス側もデータを蓄積できるので、メリットも多い。よって、ソーシャルログインというのは一定の価値があるとは思うが、それは文字とおり一定の価値しかない。
前回も書いたように、多くの人はそこまで音楽に興味関心がなく、ノイズでしかない。
ソーシャルメディアへのフィードを設計する理由とはなんだろうか。それはまずサービスユーザからの声からそのサービスユーザのソーシャルグラフないしインタレストグラフが興味関心を抱き、サービス認知からの訪問、利用までを期待していることがほとんどだろう。
もちろん、フィードすることで(そのフィードする内容にもよるのだが)、ソーシャルグラフ内のインタレストグラフが反応して、コミュニケーションが生まれるパターンもある。しかし、そのほとんどはfacebookやTwitter上である。サービス内でのコミュニケーションも、もちろん存在するがそれはフィードとは意味が違う。
当たり前だが、今一度書こうと思う。音楽サービスからのソーシャルメディアへのフィードで拡散が起きることは絶対にない。これは本当によく勘違いされがちなのだが、絶対にない。ただ、プロモーションやキャンペーンなどの話題化を狙ったものに関しては別である。あくまで音楽サービスからフィードされた内容に関してである。
“共有”と”拡散”に関しては本当に本当に勘違いが多いので、この記事を参考にするといいと思う。「共有」と「拡散」の違い ~ 「共有・拡散します!!」のウソ」
つまり、現状、多くの音楽サービスがソーシャルメディアを活用するというのは、各ソーシャルメディアの機能的部分と連携しただけに過ぎない。これはこれでひとつのやり方なのだが、ソーシャルメディアと音楽サービスが連結できることは何も機能的側面だけではない。
音楽サービスの魅力をソーシャルメディアでブーストさせる
音楽サービスの中のコンテンツが切りだされてソーシャルメディアへフィードされる。これでは全く音楽好き以外には興味のないものなり、華麗にスルーされる。
これは言うならば、精肉店でお肉のバラ売りをしているようなものである。
例えば、友達が買った(この場合は聴いた、体験した)ことから、興味を持つ友人は少しいるだろう。同じ精肉店(音楽サービス)を使っていればコミュニケーションも生まれるだろうし、その買った(聴いた、体験した)ロース肉(楽曲)に興味があれば、お店(音楽サービス)に訪れてくれるかもしれない。
しかし、せっかくならばその精肉店(音楽サービス)自体を多くの人に広げたほうがいいのではないだろうか。こんな美味しいお肉(音楽サービス)を売っているお店があること自体を伝えるのだ。
もちろん、精肉店なんていうのはどこにでもあるので、それでは何の価値にもニュースにもならない。ソーシャルメディアと音楽サービスを連結させることは何も機能的だけではない。その音楽サービス自体の話題を作り出し、それをソーシャルメディアの中でブーストさせることだってできるのだ。
そのためには、Talk-able(話したくなる要素)、Shar-ble(共有したくなる)、Buzz-zble(話題になる要素)が必須条件になる。
とはいえ、忘れてはならないことは音楽サービスは「仲間ゴト化」が適している。よって、ターゲットは変わらない。音楽好きを中心とした人たちになる。
そして、それを更に推し進めていくと戦略PRとソーシャルメディアを組み合わせたソーシャルインフルエンスになる。前回も述べたとおり、サブスクリプションサービスは「世の中ゴト」化を目指さなければならない。なので、影響の範囲は最大公約数となる。
影響の範囲は音楽サービスの中でも当然変わってくる。ミュージシャン向けのサービスと音楽リスナー向けのサービスは違うし、音楽リスナー向けでも更に異なってくる。
表題の「音楽サービスとソーシャルメディアを連結させる方法」とは各音楽サービスによって影響の範囲は異なるとはいえ、①ソーシャルメディアの機能的側面での連結と②ソーシャルメディアと戦略PRによってサービス自体をブーストさせる。この2パターンがある。しかし、あとで記述するが、サブスクリプションサービス以外の音楽サービスで戦略PRは不可能である。
えてして多くの音楽サービスは①のソーシャルメディアの機能的側面ばかりに目が行きがちである。ソーシャルメディアができることは、言ノ葉を通して広がっていく伝搬力だ。機能的フィードではソーシャルメディア上で全く広がらない。だが、音楽サービスの魅力をそれぞれの影響の範囲内で話題にすることは可能だ。
そのためには、ただただプレスリリースを打ったり、ニュースメディアに取り上げられるだけではなく、設定したクラスタとトライブのターゲットにどのような言ノ葉を持って広がっていくのか、伝えたくなるのかを事前にプランニングすることが重要だ。
ソーシャルメディアと音楽サービスを連結させることで生まれる価値は多い。ただ、そこには戦略PR的な概念だったり、作戦が必要になる。
ソーシャルメディアで、Talk-able(話したくなる要素)、Shar-ble(共有したくなる)、Buzz-zble(話題になる要素)のネタを作り出し、それがソーシャルメディアで回り出す。無作為にソーシャルメディアで回ることを期待するのではなく、まず届けたい、使ってみたいと設定するターゲットに対して、いかに「自分ゴト」化してもらえるコンテクストを作り出せるか。
例えば、WEB制作会社であるLIGは広報としてジェイというキャラクターを立て、企業はもちろんジェイから発信するコンテンツが定期的にネタやニュースとしてソーシャルメディアで伝搬する。(最近辞めてしまったが・・)このLIGないしジェイが発信するコンテンツは基本的にIT業界を中心とした影響の範囲内での「仲間ゴト」化である。
僕のようにIT、マーケティング業界に身を置く人間は「自分ゴト」化もしやすく、「共感」しやすいポイントが存在する。つまり、ターゲットが明確なのである。この定期的なソーシャルメディアを伝搬するネタやニュースのコンテンツが回ることでフリークエンシーを高め、企業のブランド価値にも影響を及ぼしているはずだ。しかし、これがIT、マーケティング業界には全く関わりのない僕の地元の友人の場合、刺さる可能性は低い。なぜなら、ターゲットとしている影響の範囲外に存在してる人たちだからだ。
しかし、それがソーシャルグラフによって伝わることはある。とはいえ、その人々に刺さっても企業的にはそれはあまり意味は無い。あくまでIT業界を中心とした影響の範囲内での「仲間ゴト」化で話題になるほうがいいはずだ。ただのWEB制作会社など無数にある。その中でLIGという企業を選んでもらったり、認知してもらったり、比較検討にのぼったり、想起してもらうときにソーシャルメディアと連結させる。
このように、音楽サービスでも同じ事が言える。
音楽サービスの機能的側面でソーシャルメディアを連結させながら、音楽サービス自体を設定したターゲットの中の影響の範囲内で「自分ゴト」化するようなコンテクストをネタやニュースとしてソーシャルメディアと連結させる。
ちなみにサブスクリプションサービス以外の音楽サービスで戦略PRは難しいだろう。なぜなら、そこまで時間と予算を投下できないからだ。だからこそ、ターゲットの中の影響の範囲内で「自分ゴト」化するようなコンテクストをネタやニュースとしてソーシャルメディアと連結させることが重要になる。そのときに、LIGのような事例は戦略PRではないが、ソーシャルメディア上での広がり方としてひとつの参考になるだろう。
繰り返すが、音楽サービスは「仲間ゴト」化を目指す。そのためには、「自分ゴト」化することが何より必要で重要な部分である。サブスクリプションサービスに限っては「世の中ゴト」化を目指さなければいけないので、ソーシャルインフルエンスがその解決の一端を担うと思うのだが、それはまた次回。
まとめると、音楽サービスとソーシャルメディアの連結方法は機能的側面だけでなく、音楽サービスそのものの話題を作り、ソーシャルメディアで伝搬させることも連結させることのひとつである。ただし、音楽サービスは影響の範囲が「仲間ゴト」を中心にしたネタやニュースを作ること。また、サブスクリプションサービスに限っては影響の範囲を「世の中ゴト」に設定し、戦略PRも組み合わせたソーシャルインフルエンスが鍵になる。
【独り言】
先週出たONE OK ROCKの新作「人生×僕=」(ジンセイカケテボクハ)がカッコいい!!!
タイトルのように、「人生賭けて僕は」、何を成し遂げたいんだろうと思いを巡らす3月。
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- 第1回 : 2013年4月11日(木) 20:00-22:00
- 第2回 : 2013年4月25日(木) 20:00-22:00
- 第3回 : 2013年5月9日(木) 20:00-22:00
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