サマーソニックから考えるソーシャルメディアの使い方

今年はオールナイトのソニックマニアも開催され結果、サマーソニックは3日間での実施となった。3日間で14万5000人が来場したという。今回は2011年のサマーソニックをもとにフェスとソーシャルメディアの関係について考えてみたい。

サマーソニックの種を蒔く

サマーソニックは今年は例年になく早いスタートとなった。去年の12月24日に今年のヘッドライナーを発表し、非常に期待感を抱かせる始まりだった。出演アーティスト情報、音源、映像、ソニ飯情報、天気情報、来日情報と多くの情報を発信していた。

今年実施した情報発信ツールは以下のとおりである。

・公式サイト
・twitter
・facebook
・myspace
・blog
・youtube
・ustream
・instagram

多くのタッチポイントにサマーソニックを配置し、たくさんのユーザに「共有」させる仕組みはできていたと思う。しかし、一連の情報を見ていて、これはサマーソニックに参加することをある程度踏まえた人たちに向けての情報だったような気もする。

そういった意味ではアーティスト発表はユーザの「感情」「熱度」を拡散させる要素は十二分にあるが、それ以外でいかにもっとサマーソニックの魅力を伝えるかが必要だったような気もしている。

つまり、想定ターゲットを3つに分類して考える。
・ライトユーザ(サマーソニックに行ったことない)、
・ミドルユーザ(サマーソニックに行ったことはある。悩み中)
・ヘビーユーザ(ほぼ毎年サマーソニックに参加しているユーザ)

上記3分類のターゲット設定を行い、それぞれの想定ターゲットに合わせた情報発信と想定ターゲットが用いるソーシャルメディアを活用した施策とmyspaceに単純に音源をアップするだけでなく、ターゲットに合わせた音楽サービスの共有を行えれば、もっとよかったのになあと思っている。

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例えば、twitterであれば東京大阪合わせて約44000人のフォロワーがいるわけだが、ここにはすべてのターゲットがおそらく入っているので、いかに多面的に簡潔にサマーソニックの魅力を伝えるかが重要だ。

facebookは約14000人のファンがいるが、ここはもっと「広く、深く」の情報発信ができるはずだ。音楽に限らず、あらゆる情報を文字以外の要素も含めてリッチメディアで発信することができる。期待感の醸成を当日まで最大限高めるのが大きな役割だろう。

公式サイトで言えば、参加するアーティストと関連性が深い参加アーティストを連携させたり、そのミュージシャンの音楽的系譜を可視化させるミュージックグラフなどただのアーティストプロフィールだけではない情報発信方法はあるはずだ。

そういう意味では情報発信にいかに主眼を置くか、告知等はどれだけ少なく出来るかが重要になると思っている。アーティストブッキングはもちろんのこと、サマーソニック自体は何が面白いのか、何が魅力なのか何がそれほど人を惹きつけるのか。そういった着眼点で情報発信を行っていくとアーティストに頼らないサマーソニック自体のファンを作り出すことにつながってくると思うのです。

クワトログラフを用いて、より多くの人々にサマーソニックを伝える。
どれだけ関与度と期待度を高めていけるか。どれだけライトユーザがサマーソニックに参加しやすい仕組みを生み出せるか。どれだけあらゆるハブになり、ここでも楽しめるソーシャルターミナルを作り出せるか。

それは今youtubeにある動画だけでなく、多面的で複合的に行うべきだ。

決して映画と違って安い値段ではないのだから、いかにそれでも参加したくなるきっかけを作れるかはソーシャルグラフだけでは解決できないものだ。サマーソニックの種をあらゆるところに蒔くことだ。

サマーソニックそのものを好きになってもらう

いざ、サマーソニックが始まると情報発信のターゲットはサマーソニックに今回参加しなかったユーザを中心に情報発信を行ったほうがいいだろう。

参加するユーザはそれがフルであれ、一日であれ、もはや自分のサマーソニックを作り出している。
タイムテーブルとにらめっこし、どんなアトラクションがあるのか確認したり、見たいアーティストを友達と話しあったりしている。共有、共感の種を各自が発信している。

問題はいかに「サマーソニックに参加しなかったユーザ」に来年は行ってみようかなと思わせる「共有、共感の種」を蒔けるかだ。

そういう意味では、やはり権利上の問題などでとても難しいのだけど、生中継やアーカイブ放送は実施してほしい。

いろいろなルールや制約があるのは承知の上で、これからはもっと音楽は開放されていくべきだと思う。

といっても、今年はチケットの売上が非常に好調でそんな「サマーソニックに参加しなかったユーザ」なんて取り込まなくても、十分と思われるかもしれない。ソーシャルメディアなんて、そこまで駆使しなくても問題ないかもしれない。

ただ、重要なのはそのチケットの売上は
「アーティストに対するものなのか」
「サマーソニックに対するものなのか」
という点だ。

今後、サマーソニックに限らずフェスは後者を目指していくべきだと思う。
「アーティストに関係なくサマーソニックを愛する人々をいかに増やしていけるか」

それができるフェスはもっともっと人々にとって価値ある人生の一部になるイベントとなって、サマーソニックを愛してくれるだろう。それが回りまわって、巡り巡ってたくさんの人々がサマーソニックへ訪れてくれるだろう。フジロックなどはもはやその域に達している。

リアルとソーシャルメディアを組み合わせる

今年、サマーソニックを訪れて感じたことは、去年以上に、圧倒的にスマートフォンユーザが増えたことだ。

しかし、残念ながら今年もソーシャルメディアとの連携は特に見当たらなかった。相変わらずセットチェンジの時間は来日するアーティストの情報やスポンサーの広告が流れる。それはそれで大事なことなのだけど、そのスクリーンだって、たくさんの可能性が詰まっているのではないだろうか。共有→共感→共鳴を経てこそ、単独来日公演は価値を生む。

例えば、ステージ別やアーティスト別のハッシュタグを用いて、ライブ前であればそこに集うファン同士がつぶやきが表示されたり、ライブ後であれば、「共鳴」を起こした人々の想いを可視化させたり、もっといろいろできることはあるはずだ。

また、先日コカコーラが行ったfacebookキャンペーンのフェイスルックなども面白い。言葉や写真だけではない、そこに参加している友達の笑顔はなによりも共有したくなるし、興味がわく。

その他、チェックインやソーシャルパトロンプラットフォーム、フェスアプリの改良など、いろいろできることはあるはずだ。そのへんは以前「フェスでソーシャルメディアを活用する」で書いた。予算の面などいろいろあると思うので、なかなかこうはいかないと思うがいつか実現してほしい。

今回、instagramでハッシュタグをつけてという試みは素晴らしかったけれど、私はそれをサマーソニックが終わってから知った。そして、instagramを知らない人にとっては何のことだかわからない。それは単にリンクを貼るというだけではなく、facebookしかり、どんなサービスでどんなユーザメリットがあることを伝えないと広がらない、使われない。

ソーシャルメディアサービス自体を知らせることはとても忘れがちだけど、それをしっかりとプラットフォーム会社だけでなく、それを利用するフェス側も啓蒙に努めるべきだ。なので、個人的にはもっとプラットフォーム会社とこういったフェス主催者とで共同でトライしてほしいと思っている。

1年間つながりを構築できること

以前書いたブログでフェスは1年間つながりを構築できるサイトを目指すべきだし、目指せると書いた。フェス前→フェス中→フェス後の流れで言うと、実はこのフェス後がいちばん寂しい感じになっている。打ち上げ花火のようにパッと咲き、消えてしまう。

サマーソニックのサイトもライブレポートが上がっているが、写真だけであのときの熱度や興奮は想起しにくい。

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私はフェス後こそ、音楽を聴いてもらえる最大のチャンスだと思う。興味がなかったアーティストをたまたま見て、気になったかもしれない。
見たかったアーティストをようやく見れて、そのアーティストの曲をより深堀したくなるかもしれない。フェス後は音楽の価値が最大限高まっている瞬間ではないだろうか。

だからこそ、「共鳴」を起こした人々に対して、スピーディーにもう一度「共有」→「共感」のサイクルを用意できるかだ。

アーティストブッキングだけでなく、サイトも海外フェスを参考にしながら、関連アーティストのリコメンドやライブアーカイブ、最新アルバム情報、セットリスト、人気ライブランキングなどを含めたシェアできる、共有したくなるようなフェスサイトのソーシャル化も来年はもっと加速していくと思う。ロラパルーザもyoutubeでライブアーカイブをアップロードしている。

良くも悪くもセットリストも映像もユーザの手によって公開される。ユーザは自分が見たアーティストのライブを語りたい。見れなかったアーティストがどんなライブをしたのか。ノーマークだったアーティストのクチコミ。

それは各ソーシャルメディアで語られ、流れ、蓄積される。twitterであり、facebookであり、mixiであり、ブログでだ。

フェスとユーザ、アーティストとユーザ、ユーザとユーザをいかにして語り合える場所を提供できるか。今はそれぞれのソーシャルメディア上で分散されている。

すべてを集約することは無理でも、ひとつ場所を提供してあげることで、半年間は余韻に浸り、もう半年間は期待に胸を膨らませるユーザを増やすことが重要だ。

しかし、これにはもちろん、マンパワーもいるし、お金もかかるだろう。でも、ここはきっと大事で大切な場所になる。
ソーシャルメディアによって、共有で『点』を集め、共感で『線』を紡ぎ、共鳴で『円環』を描くサイクルこそが、鍵になる。
フェスサイトはそれを可能にできると思っている。

サマーソニックに参加する人の声に傾聴する

summmersonicから考えるソーシャルメディアの使い方として、最も重要なのは参加者の声を集める。活かすことだ。

今年のソニックマニアの飲料導線は非常に悪く、多くの人が怒りの声をあげ、非常にもったいなかった。本当であれば、primal screamやunderworldを始めとした素晴らしいライブやソニックマニア自体を語られるべきなのに、残念ながら飲み物に関わる脱水症状や運営体制に多くの批判があった。

電波が届かなかった(人が殺到してつながらなかった?)ことも致命的だ。電波がないせいで、インタレストグラフとソーシャルグラフの統合も
行うことが難しかった。これは非常にもったいないことだ。

フェスを運営していれば、万人が満足することは難しだろう。予想外の事態も起きるだろう。ただ、このような「声」を大事にしてほしいと思う。

サマーソニックを愛する人がもっともっと増えるために、参加者の声をきちんと来年は活かしてほしいと思っている。それはフェス自身に対してもそうだし、参加者のマナー向上に関しても同様だ。

最も大事なことは、いかにソーシャルメディアを駆使するかではなく、いかにソーシャルメディアを用いて、「傾聴するか」だ。

得てして、ソーシャルメディアを駆使してあれもこれもとなりがちだけど、まず参加者の声を聞く。これがあって次の施策を打てる。当たり前の話だけど、最も大切なこと。

それは参加者に媚びるわけでもなく、迎合することでもない。サマーソニックを愛してくれる人を増やすために、必要なことだからだ。たくさんの声はきっとサマーソニックにとって宝物となるはずだ。

その声には、無限のヒントが隠されている。

参加者の声に傾聴し、活かし、サマーソニックをよりよいものにしていく。そして、そこで好きなアーティストはもっと好きになり、知らないアーティストに出会い好きになっていく。そして、ひいてはサマーソニックも、もっと好きになっていく。1年を通してサマーソニックがかけがえのないものになっていく。

「各アーティストを愛する人々の集うフェス」から「サマーソニックを愛する人々の集うフェス」へ。

リアルな場こそが「ソーシャルレゾナンス:共鳴」が鳴り響く唯一の場所だと思うので
それまでの過程とリアル後の共有→共感の仕組みをソーシャルメディアの力でうまく活かされるといいなあと思います。

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来年、今年の声を活かして、よりよいサマーソニックになることを期待しています。

今回のサマーソニックの写真は私の音楽先生でもある@hiro_britpopさんからお借りしました!
いつもいい音楽や情報を教えて頂いてありがとうございます!

ちなみに僕はよくライブやフェスなどではモッシュピットに突っ込んで、騒いでるように思われているみたいですが、意外に真ん中あたりで結構静かに聴いているタイプだったりします(笑)


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