メタモルフォーゼ中止から考える「守り」としてのソーシャルメディア

2011年9月3日。
台風12号のため、野外フェス:メタモルフォーゼは中止された。

今回はソーシャルメディアにおけるフェス中止までの流れと中止後の動きからみえる「守り」のソーシャルメディアについて考えてみたい。

そもそも私が中止の動きがあることを知ったのはtwitterからだった。
しかし、オフィシャルからではない。どこで漏れたのかいろいろな人のつぶやきから聞こえてきた。

人によって情報取得の流れは違うだろうが、私の流れはこうだった。
照明関係者らしき人のツイート→オフィシャルバスツアースタッフの声→出演者のツイート。
結局、オフィシャルが最後の発表となり午前11時くらいだっただろうか。
メタモルフォーゼ2011は中止が確定となった。

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私はいち参加者としてメタモルフォーゼはものすごく楽しみにしていたわけだけど、主催者の一連の中止までのスピードの決定は早かったように思う。
きっとギリギリまで開催をするべく努力されたのだろう。
だからこそ、変に情報を発信することなく、開催できると信じて努力されていたのだろう。
こうして中止になってしまっていちばん悔しいのは主催者の方々に違いない。

しかし、情報発信の方法としてソーシャルメディアの使い方は上手ではなかった。

リアルタイムメディアとしてのtwitter

メタモルフォーゼに限らず多くのフェスアカウントは一方通行的な情報発信ツールだ。
ユーザとコミュニケーションを行うことはない。
twitterの本来の使い方ではないと思うが、フェスアカウントに関してはそれでいいと思う。
ただし、それが「リアルタイムメディア」として機能していればだ。

アーティスト発表や最新情報の更新だけがtwitterの役割ではない。
刻一刻として変わる状況下にリアルタイムに情報を届けることができるのもtwitterの大きな意味だ。

今回であればtwitterで情報が告知されたのは、もちろん公式に決まってからだ。
今年のメタモルフォーゼで情報発信を間違ってしまったのは2点ある。

①オフィシャルサイトが情報発信の最後の場所になってしまった
②リアルタイムメディアのtwitterを使いこなせなかった

まず、①のオフィシャルサイトが情報発信の最初の場所であるはずが情報発信最後の場所になってしまったという点は今後大きく改善していく必要があるだろう。

オフィシャルサイトがあくまで基点であり、中心地なのにも関わらず情報の統制が取れず結果的に情報はすでにユーザに漏れているのに、最後の情報発信は間違っている。

本来であればオフィシャルサイト→twitterだろう。
もちろん主催者からすればまずは出演者に通達することも必要だが、その主演者からのツイートで知ることはユーザからすると、あまりいい気分はしない。

同時にオフィシャルサイトでの最後の最新情報が当日券販売の情報だったと私は記憶している。しかも、当日前夜の夜だったように思う。これも主催者的には中止の可能性があったことを当然認識していた中でのニュースリリースだったのだろう。

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さて、そんなとき私たちユーザはずっとこう思っていたはずだ「やれるのかな?台風きてるけど」そういったときにユーザはオフィシャルサイトなりtwitterなりの情報をつぶさに見ている。

しかし、オフィシャルサイトでもtwitterでも更新される情報は開催する前提の情報だ。
そこで私たちはやるのだと思う。信じる。準備をする。

ここで問題なのは、主催者側の対応ではない。
何度も言うように主催者側の方々は最善を尽くしてくださったと思う。開催できるように。
その結果、中止という判断をされたのだ。致し方ない。

②のリアルタイムメディアとしてのtwitterは今回活用されていなかったのが事実だ。
今回twitterでできたことは、開催できるか否かの情報をリアルタイムに発信することだった。

もちろん、無闇に「やりそうです!」や「難しいかもしれません」など曖昧な情報を発信し、ユーザを戸惑わしていけない。ましてや遠方から来るお客さんもいるのでなおさらだ。「検討中である」とか「何時までに最新情報を伝える」など「今」を誠実に伝える方法はあったはずだ。

大切なのはオフィシャルの事実をありのままに前夜からリアルタイムで伝えておくことではないだろうか。主催者は開催すべく最善を尽くしている。ユーザも開催を信じて準備をしている。でも、心の中で、もしかしたらという想いが心をよぎる。
ここに問題があった。

主催者とユーザに共通の懸念点があるのに、共有できなかったのだ。
主催者側はもしかしたら中止もありえるかもしれないけど、開催すべく準備を行う。
ユーザは台風の影響でまわりのライブとかも中止になってるし不安だけど、準備をする。
お互いにもしかしたら?という疑念はありつつも、つながる術がなかった。
だから、もったいなかった。その架け橋になるのがソーシャルメディアになりえたのにと思う。

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今回、開催中止発表が遅すぎるという声が多く聞かれた。
では、前夜に中止発表をしていたらどうだろうか?早すぎる!と言われたのではないだろうか。

私は最速のスピードで主催者側の方々は決断されたと思う。
但し、その中止までの情報発信方法と発信順序を間違えたと思っている。
そこで見えてくるのはソーシャルメディアガイドラインの策定だ。

企業だけでなくフェスやレーベルもガイドラインを持つ時代

音楽ビジネスでソーシャルメディアを活用することは、プロモーションやテクノロジーを駆使した施策も大切なのだけど、そういった「攻め」の部分だけではなく、「守り」の部分もしっかりと構築すべきだ。

これからより加速するソーシャルの時代と次々と現れる新しいテクノロジーの中で、いかに手段の目的化にならず、ソーシャルメディアを「使う」か。
そのためには、twitterも含めたソーシャルメディアガイドラインが必要だ。

それは今後、レコード会社やレーベルひいては各アーティストにも必要になるし、場合よってはソーシャルメディアトレーニングも必要だ。
メディアトレーニングがこの世の中にあるように。

情報発信のやり方やコミュニケーション方法、炎上時の対応策、情報連絡フロー、情報通達手段、関係者のソーシャルメディアリテラシーの平準化などあらゆる事態を想定したソーシャルメディアガイドラインの存在が欠かせない。本来であればソーシャルメディアを「使う」際に策定すべきことではある。

summersonicから考えるソーシャルメディアの使い方でも書いたが、まずそもそものソーシャルメディアの特性と本質を理解する。特にフェスのような場合はより一層必要になってくる。

今までのようなメルマガやオフィシャルサイトの情報伝達手段としての情報発信ツールではない。ユーザが密接に関わるのがソーシャルメディアだ。

だからこそ、今回のメタモルフォーゼの一連の中止から発表に到るまでに起きてしまったミスはソーシャルメディアガイドラインを策定し、理解し、浸透させることが今後重要になってくる。

企業においてもまだまだソーシャルメディアガイドライン(炎上対策ガイドライン含む)を策定している企業は少ない。同時に仮に策定しても策定したことに満足して実際には実行されていないケースもあるが、それでは意味が無い。

今回のメタモルフォーゼ中止は炎上でも何でもない。(むしろ、応援コメントも多かった)また、フェスの場合はアーティスト発表などであえて漏らすことも戦略によってはあるかもしれない。大切なことはそれが意図的なのか、結果的なのか。
どちらにしても通常時、非常時においてもソーシャルメディアガイドラインを策定し、関係者一同、フェス主催者もしっかりと実行することが必要になってくるだろう。

「攻め」のソーシャルメディアと「守り」のソーシャルメディアの両輪が合わさって初めて力を発揮するものだ。

何度も言うが、ソーシャルメディアを活用することはプロモーションやテクノロジーを駆使するだけではない。特性や本質やもしもの自体に備えて、しっかりと体系だてたガイドラインを個々に持つ必要がある。当たり前の話だが、それを使いこなせないと全く意味はない。

来年はもっとソーシャル化がフェスでも進むだろう。
そうなった場合、より一層のソーシャルに対する知見と経験と対策が必要になる。

メタモルフォーゼのようにみんなに愛されているフェスだからこそ、「攻め」以外のソーシャルメディアの活用の仕方を取り入れて行ってほしいなあと思っています。

最後にメタモルフォーゼ中止後に出てきた(まさかの事態に備えていた可能性もありますが)同時多発的に起こったTyphoonpartyはまさしくソーシャルメディアの力を体感する出来事だった。私は代官山UNITに行ったが、ここまで人が集まり、人と人とつながり、一体化することができたのは、ひとえにソーシャルメディアの力が大きいと思っている。

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ソーシャルメディアの表と裏。ソーシャルメディアの凄さと怖さ。ソーシャルメディアの「攻め」と「守り」それぞれ考え、浸透させ、実行してくことが今後重要だと思います。

来年はきっと今年以上の素敵なフェスになることを期待しています。


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こちらの記事はTMHブログポータルの方にも転載いただいております。このブログは個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません。